この1年で、「AIが身近な存在になってきた」と感じている方は多いのではないでしょうか。
少し前は試すフェーズでしたが、現在は業務に組み込むフェーズに移行しています。加えて、最近ではAIエージェントにも関心が集まっています。
一方で、「どこまでAIに任せるべきか」「人の役割は何か」といった課題も明確になってきました。
そこで今回は、AI活用の変化を整理しながら、AIエージェント時代における業務の役割分担と、raainが担っているようなBPOにおける人の価値を考察します。
この1年で変わったAI活用の流れ
この1年でAI活用の位置づけは大きく変わりました。
「試すツール」から「業務の一部」へ
生成AIサービスの普及と進化により、これまで試験的に使われていたAIは、いまや業務の中に組み込まれる存在になっています。たとえば、次のような業務で活用が広がっています。
- 議事録作成
- メール下書き
- レポート整理
- FAQ対応
- データ要約
こうした領域では、AIを使うこと自体が特別ではなくなり、多くの企業で日常的に活用されています。
体感ですが、「業務で一度もAIを使ったことがない」というオフィスワーカーは、かなり少ないのではないでしょうか。
その結果、AI活用における重要テーマは「AIは使えるかどうか」ではなく、「どのように業務へ組み込むか」へとシフトしています。
AIエージェントという新たな潮流
AI活用の捉え方が変わる中で、生成AIに続いて注目を集めているのが「AIエージェント」です。
AIエージェントとは、目的の達成に向けて、さまざまなデータやツールを活用しながら自律的に判断・行動するAIシステムです。
複雑な業務の自動化をはじめ、外部ツールとの連携や条件に応じた判断、定期的な処理といった、いわゆる目標達成型のタスクへの活用が広がり始めています。
こうした流れから見えてくるのは、AIの役割そのものの変化です。
この1年でAIは、「作業を補助する存在」から「業務そのものを実行する存在」へと進化しつつあります。
なぜAIエージェントが注目されているのか
AIエージェントがここまで注目を集めている背景には、いくつかの構造的な変化があります。
① 人手不足の構造化
少子高齢化や人口減少が進む日本では、人手不足は一時的な課題ではなく、もはや前提となっています。
これまでのAI活用は、主に業務の効率化を目的としたものでした。しかし、今後さらに採用が難しくなると見込まれる中で、限られた人員で業務を回すためにはAIに業務そのものを任せていく必要があります。
このようにAIには人の「代替」としての役割が求められており、その期待がAIエージェントへの関心を強めています。
② SaaS連携の一般化
CRMやMA、広告運用、会計システムなど、さまざまな業務ツールがAPIを通じて接続できるようになりました。
これにより、AIは単体で機能するだけでなく、複数のツールを横断しながら業務を進めることが可能になっています。AIエージェントは、こうした環境を前提に、複雑な業務を自律的に実行・自動化できる点が評価されています。
③ 自走型組織への関心の高まり
多くの企業において、自走型組織への関心が高まっていることも見逃せません。
この1年でAI活用はすでに当たり前となり、AIを使いこなす人材が企業の競争優位になる時代へと変化してきています。
その中でAIエージェントは、組織全体の生産性を底上げする存在として捉えられ始めています。
それでもAIにすべては任せられない理由

AIエージェントが期待される中、それでもAIにすべてを任せることはできません。
なぜなら、AIが進化しても本質的に変わらない部分があるためです。
① 文脈理解の限界
AIは大量のデータからパターンを見つけることには優れていますが、「その会社ならではの背景」を理解することは不得意です。企業独自の歴史や暗黙のルール、社内の力関係、感情の機微といった要素は明確なデータとして存在しないことが多く、AIが十分に捉えられないためです。
しかし、こうした要素は実際の意思決定において重要な役割を果たします。
そのため、文脈を踏まえた判断が求められる場面では、依然として人の関与が不可欠です。
② 責任の所在
業務においては、「正しい判断を下すこと」と同じくらい、「その結果に責任を持つこと」が重要です。たとえAIが合理的で精度の高い判断を導き出せたとしても、その結果に対して責任を負うことはできません。最終的に意思決定を行い、責任を負うのは人です。この責任の所在という観点こそが、すべての業務をAIに任せられない理由です。
③ 非定型業務の存在
実際の業務には、あらかじめ想定された手順だけでは対応できないケースが数多く存在します。たとえば、突発的なトラブルや顧客ごとの個別事情、優先順位の変更など、その場の状況に応じた柔軟な対応が求められるケースです。こうした非定型業務は、現時点では完全に自動化することが難しく、人による対応が必要です。
このように、AIは進化を遂げている一方で、すべての業務を任せることはできません。
だからこそ重要になるのは、AIと人それぞれの役割分担をどのようにするかという視点です。
AIに任せる・任せないの判断基準とは
AIに任せるかどうかの判断基準は主に次の3つです。
- 再現性が高いか
- 判断の重さはどの程度か
- 感情や関係性に影響されるか
これらを基準にすると、任せやすい業務とそうでない業務が明確になります。
| 視点 | 任せやすい業務 | 任せにくい業務 |
|---|---|---|
| 再現性の高さ | ・定型処理 ・ルールが明確 ・パターン化された業務 | ・毎回前提が変わる業務 ・暗黙の了解が多い業務 ・個別対応業務 |
| 判断の重さ | ・影響範囲が限定的 ・後から修正可能 | ・対外的責任が重い判断 ・経営への影響が大きい判断 |
| 感情・関係性 | ・事務処理 ・情報整理 | ・クレーム対応 ・重要顧客との交渉 ・社内調整 |
このように整理すると、AIは「再現性が高く、影響が限定的で、感情や関係性が絡まない業務」に適しているといえます。
BPOにおけるAI活用とは
BPOにおけるAI活用の目的は、人が担うべき部分を明確にすることです。決して人を減らすことではありません。AIと人のそれぞれが担うべき役割を明確にし、全体の生産性を高めることがポイントです。
これまでに紹介してきた判断基準に照らすと、BPOにおけるAIと人は次のように役割を分担できます。
AIが担える領域
データ入力、一次情報の整理、レポート生成、マニュアル化、問い合わせの初期対応など、再現性が高くパターン化しやすい業務
人が担う領域
最終判断、品質の担保、文脈を踏まえた対応、クライアントとのコミュニケーション、改善提案など、責任や関係性が伴う業務
このように役割の判断基準を設けることで、業務効率化や品質の担保、組織の実行力が向上します。
つまり、AIとBPOを組み合わせることで、次のような状態を実現できます。
AI × BPO = 効率化 + 品質担保 + 実行力
こうしたAIと人の最適な役割分担を実現したい方は、ぜひraainのバックオフィスサポートもご検討ください。
この1年で変わらなかったこと

AIはこの1年で大きく進化しましたが、本質的に変わっていない点もあります。
それは、AI活用の本質が「業務設計」にある点です。どの業務にAIを組み込み、どのように活用するのか、人による設計次第で成果が左右されます。
言い換えれば、成果を生み出す主体は今も変わらず「人」です。
AIはあくまで成果を引き出すための手段であり、それ自体が価値を生むわけではありません。
つまり、AIはどれだけ進化しても「武器」であって「主体」ではないということです。
テクノロジーが変わっても、成果を出すための構造づくりの重要性は今までと変わっていないのです。
まとめ
この1年で、AI活用は業務に組み込むフェーズへとシフトしました。中でもAIエージェントは、業務の実行力をさらに高める存在として注目されています。
一方で、すべてをAIに任せることはできません。重要なのは、「何をAIに任せ、何を人が担うのか」という基準を明確にすることです。
これからの競争力を左右するのは、AIと人の役割分担をいかに設計できるかにあるといえるでしょう。
